第十八番札所である日光山 中禅寺(ちゅうぜんじ)は、誰もが知る観光名所、奥日光中禅寺湖の真ん前にある寺院である。天台宗の寺院であり、このお寺は檀家が居ない。よって、観光および檀家以外の参拝者により成り立っている。中でも、風光明媚な中禅寺を眺められる五大堂と、根がついたまま彫られた『立木観音』が有名で、その知名度から、奥日光観光者は、必ず訪れる名寺とも言える。
霧の中禅寺
日光は、今から1,200年前の784年、勝道上人により開山された。世界遺産になっている「日光山輪王寺」の別院。本記事、文頭でも説明したが、こちらのお寺は檀家がいない。よって、観光参拝により維持・運営されているお寺であり、奥日光というお土地柄、外国人観光客も多く、平日の昼間でも多くの観光参拝客で溢れている。
この日はあいにく、大量の霧が発生しており、中禅寺自体がミストに包まれていた。青空に映える朱の伽藍も良いが、霧に包まれた中禅寺も幻想的で素晴らしい。
近くに、大きな無料駐車場があるので、車で拝観する人には、とても便利である。駐車場から中禅寺へと歩いて移動。
入り口である仁王門には2躯の仁王像。ここで拝観料(大人 500円)を払ってから中へと。霧をかき分けるように、中禅寺への中へと進む。
入るとすぐ右横に、鐘楼が。本来であれば鐘をつくことができたらしいが、今は改修中とのことで中へは入れなかった。こちらも霧に包まれ幻想的に佇む鐘楼堂が美しい。
こちらは、鐘楼堂から振り返り仁王門を見た時の写真。
仁王門をくぐり鐘楼堂を真横にみた状態で、まっすぐに伸びた参道が見える。正面に見えるのは観音堂ではなく大黒天堂だ。御堂含めて境内全体が霧に包まれて美しい。
観音堂に向かって少し歩くと、右側に珍しい木のコブがあった。木の幹に飛び出した木のコブは「身代わりコブ」と言われ、自分の体の痛いところを触ってからコブに触れると、身代わりになってくださるそうだ。巨木そのものを仏様に見立てる、仏教らしい救いの思想である。
さらに奥に進むと、右側に愛染かつらと愛染堂が見えた。
この木は、映画『愛染かつら』のロケ地となっているかつらの木で、撮影当時のかつらの木は落雷で消失してしまったので、これが2代目だそう。秋になると黄色に色づき、鮮やかな色彩を放つそうだ。また、葉っぱがハートの形なので、縁結びの木としても密かに有名。その奥に、愛染明王像を祀る愛染堂が霧に中で佇む。
十一面千手観音(立木観音)
境内突き当りは大黒堂である。こちらには秘仏である波之利大黒天が祀られている。
そして、こちらが観音堂。数分間隔で、観音堂とご本尊である十一面千手観音(立木観音)像についての説明を聞くことができるので、ぜひ、観音堂の中に入って説明を受けたほうが良い。観音堂から五大堂まで、一通り説明してもらえ、実に分かりやすくありがたいサービスだ。これも、檀家がおらず、観光参拝により運営されているお寺ならではなのだろう。
早速、観音堂で説明を受けてみることに。
日光を開山した勝道上人は、中禅寺湖を小舟で巡っていた時に千手観音様のお姿を見た事で、根のついたままの桂の木に、直接観音様を彫ったのが謂れだそうだ。それが今でもなお、中禅寺の御本尊としておられる十一面観音千手観音像(立木観音)である。十一面観音千手観音像は高さ5.4メートルに及び、現在もなお、その根は土に埋まったままである。
観音堂での説明を聞きながら、十一面観音千手観音像を間近で見られるからありがたい。
また、こちらの中禅寺では、特別のお守りがあるそうだ。願いを祈りながら手の中で温めると、色が変わる木のお守りが有名だそう。変わった色によって、叶ったり叶わなかったりするそうで、その報告が寺に届くという。2,000円のお守りなので、ご興味のある方は、ぜひ。
観音堂での説明を終えたあとは、階段を登って五大堂へと移動する。五大堂には、不動明王、降三世明王、軍荼利明王、大威徳明王、金剛夜叉明王の五大明王が安置されている。この五大明王が揃っているのは、とてもめずらしい事なのだそう。美しい御祈祷の道場で、しばし見とれてしまうのである。
五大堂と霧の中禅寺湖
その後は、回廊をまわって、五大堂の外の景色を眺めることができる。
本来であれば、五大堂からは中禅寺の美しい景色が眺められるという。しかし、残念ながら、この日は霧に包まれていて中禅寺湖は霧の中。しかしながら、霧の中禅寺も幻想的で美しかった。しかもこの五大堂は、映画『千と千尋の神隠し』に出てきた伽藍のモデルになっているそうだ。確かに、朱にはえた五大堂は実に気品高く高貴なイメージ。
五大堂の参拝を終えて、石段を降りて仁王門へと帰路につく。紅葉には、少し早かったが、紅葉の季節は朱の伽藍と紅葉が見事であろうと、容易に想像できた。
中禅寺は、中禅寺湖を望むロケーションの良いエリアに建つお寺である。奥日光観光の際には、ぜひお立ち寄りいただき、美しい木彫りの観音様のたおやかなお顔にふれ、心を落ち着かせるのも良いだろう。
また、帰りには近くの手打ち蕎麦屋さんで鴨南蛮そばを頂いた。こちらもとても美味しかったです。ぜひ、お詣りください。
※下記情報は、2018年現在の情報です。
基本情報 | |
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住所 | 〒321-1661 日光市中宮祠2578 TEL:0288-55-0013/FAX:0288-55-0801 |
宗派 | 天台宗 |
御本尊 | 十一面千手観音像 |
御開帳 | いつでも拝観可能 |
URL | http://rinnoji.or.jp/precincts/cyuuzenji |
時間/拝観料 | 8:00〜17:00(冬季は異なるので注意) 内陣拝観料 500円 |
注目 | 紅葉の季節は特に絶景 |
駐車場 | あり |
地図 |
御朱印 |
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<参考>
※1:坂東巡礼 三十三観音と心の法話,坂東札所霊場会監修,電気情報社,2014
※2:御朱印でめぐる 関東の百寺 坂東三十三観音と古寺,ダイヤモンド社,2017