第十七番札所である出流山 満願寺は栃木県にある出流山にある真言宗智山派の寺院。もともと、日光は1,200年前に勝道上人によって開山されたのだが、その開祖である勝道上人は、この満願寺のある出流山に籠もり、4年間修行したのだという。そして、勝道上人は、観音様を奉安し満願寺と名付けた。これらの後に、中禅寺や輪王寺創設につながるのだから、この満願寺の歴史の奥深さが容易に理解出来る。
日光よりも先に開山
とにかく、この寺『満願寺』は奥の院までの片道20分のプチハイキングが素晴らしい。よって、満願寺まできたら、奥の院までの参拝路を往復しないのはもったいないので、できるだけ早めに入山したほうが良いのである。
拝観時間は8時〜夕方5時までなのだが、正直、遅い時間帯に山に入ると『魔が差す』と言われるため、遅くとも、3時くらいまでには入山したほうがよいのである。
ここ満願寺は冒頭でも書いた通り、非常に深い歴史を持つ名寺だ。
そもそも日光の開祖となる勝道上人が、日光よりも先に開山したものであり、しかも観音堂に安置されている千手観音像は、勝道上人が没した後に、弘法大師(空海)が安置したものだというから驚く。
それほどまでに重厚な歴史を持つ満願寺は、クネクネとした山道を車で登ったあたり、出流山の中腹にある静かでひっそりとしたお寺だった。
山門には2躯の仁王像が御本尊をお守りしている。緑の山々に囲まれた山門は、見ているだけで癒やされてしまう佇まいであった。山門の建立は1700年代だが、平成2年に復元工事がなされているため、非常に綺麗に山に映える。
そこから広い境内の中へと入っていく。左に薬師堂と信徒会館が見える。信徒会館は非常に大きな建物で、こちらも見事。大広間や研修会場などがあるそうだ。
実は、満願寺は修行の寺である。今でも真言宗智山派の僧侶が修行を行う寺である。片道歩いて20分の奥の院の横にある修行の滝では、今でも滝行をしているのだそうだ。また、僧侶でなくとも、一般の人でも希望により、座禅・滝行・お百度参りなどができるそうだ。
この出流山の険しい山々に包まれた場所にある満願寺ならではなのだろう。境内全体からも、これら修行の厳しさが伝わってくるようだ。
奥の院そばにある修行の滝から流れ落ちた湧き水が、この満願寺境内まで流れ込み、美しい景観を作っているのも特徴的であった。
境内を真っ直ぐ歩くと、正面に観音堂が見えてきた。満願寺の御本尊は千手観音像。先にも書いたが、弘法大師(空海)が安置したものとされている。直接観ることはできないが、見事な観音堂の外からお詣りが可能である。
こちらの観音堂は足利義昭が建立したものだそうで、その後火災で消失したが、再建されたのだそうだ。非常に歴史的に重みのある観音堂だ。
奥の院と大悲の滝
そして、この観音堂右脇から、奥の院に通じる山道を登ることができる。参拝料は、大人300円。満願寺まできたら、ぜひ奥の院まで登って欲しいと思う。
奥の院までは片道20分ほどの山道である。綺麗に舗装されてはいないが、決して歩きにくい道ではないので、山歩き用のシューズであれば比較的かんたんに登れる。
ただし、えんえんと上り坂になるので、足腰の弱い方は慎重に登ったほうがよいだろうし、時間がかかることを考え、暗くなる前に入山したほうがよい。
そして、とにかく山道が気持ち良い。車の音も聞こえないし、静かで山々の囁きだけがこだまする、透き通った空気が流れる。心を落ち着けて、日頃の雑踏を忘れさせてくれる。
修行のためのお寺という事もうなづける。これほどの静かな山道を歩いていく内に、自然と自分自身の喜怒哀楽と向き合うことができるというものである。
かつては、この山も女人禁制であったそうだ。女性はここまでしか登ることを許されておらず、このお堂でお詣りをしたそうだ。
女人禁制というと、今でこそ男女差別用に聞こえてしまうが、きっと女性を守るという意味もあったのではないかとも思う。これほどまでに静かな山道では、女性1人では危険である。色んな意味で女性の安全を守るための意味もあったのではないかと感じてしまう。
それほどまでに静かで厳かな修行の山道であった。
そして、20~30分くらい歩いた先に奥の院が見えた。100段ほどの階段をのぼると、この山の上の奥の院まで登ることができる。こちらの奥の院には、鍾乳洞でできた観音様の後ろ姿を拝むことができる。
そして、この鍾乳石の観音様は、勝道上人の母上が子授け祈願を祈った観音様という謂れがある。それから、この奥の院の観音様は安産・子授け祈願の観音様となったそうだ。
そして、奥の院の下に流れる大悲の滝。こちらでは滝行が行えるのだそうだ。静かな出流山に湧き出る滝での修行は、想像しただけでも身が清らかになりそうだ。
この出流山 満願寺は、今でも僧侶の修行の場にされている由緒あるお寺だ。静かな緑の山々と、身の引き締まる用な静かな空気。この場にいるだけで心が落ち着き、整っていくような気持ちになる。
かつては、満願寺はお伊勢参りの行き帰りに、必ず満願寺で安全祈願をしたそうだ。また、出羽三山をお詣りする業者は、出流山にも参詣しなければ大願成就しないとも言われたとか。(※1)
坂東三十三観音の札所巡りの中で知ったお寺ではあるが、こんなに由緒あるお寺にお詣りできたことを、心から感謝したい。まだお詣りしたことのない方はぜひ、お参りくださいませ。
そして、帰りにご当地ラーメンである佐野ラーメンを食べて帰りました。麺屋 大和で食べました。チャーシュー麺がとても美味しかった!麺少なめも対応してくださいました。
※下記情報は、2018年現在の情報です。
基本情報 | |
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住所 | 〒328-0206 栃木県栃木市出流町288 TEL:0282-31-1717/FAX:0282-31-2121 |
宗派 | 真言宗智山派 |
御本尊 | 千手観音像 |
御開帳 | 不明 |
URL | http://www.idurusan.com |
時間/拝観料 | 8:00〜17:00 入山料大人(中学生以上)300円 小人(小学生)200円 |
注目 | 奥の院までの山道歩き用に、服装に注意 |
駐車場 | あり(無料) |
地図 |
御朱印 |
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<参考>
※1:坂東巡礼 三十三観音と心の法話,坂東札所霊場会監修,電気情報社,2014
※2:御朱印でめぐる 関東の百寺 坂東三十三観音と古寺,ダイヤモンド社,2017